イケメンすぎてドン引き!
ええ、イケメンで有名なお方ですから、あたくし知っております。
――3年生の吉野風太先輩。
文化祭でのミスターコンテストでは、2年連続ベスト3入り。
モテモテで、いつもそばには多種多様な美人女子たちがいる。
立てばイケメン、座ればイケメン、歩く姿は超イケメン。
成績は優秀。運動神経も抜群。
優しくて気が利いて、男女分け隔てなく、みんなと仲良し。
要は、あたしなんかには手の届かない、
まきぐそ……じゃなくて巻雲のような存在だ。
(雲の中でも、より高い位置にある雲ってことね)
「吉野クンさすがー! あんな汚い靴拾ってあげたなんて」
「オブちゃん超ラッキーじゃん! あの吉野先輩と話せてうらやましぃ~」
「てか、オブチのやつマジ足臭いんじゃね?」
ギャラリーからそんな声たちが発せられるとともに、その場は解散になった。
あ……よく考えたら、
ぶつけた相手が超不良とかじゃなくて良かったー!
「靴ぶつけてしまって、しかも、逃げてしまって、本当にごめんなさい!」
「あはは、いいよ。遅刻しそうな時間だったもんね。次は気をつけなねー」
目の前のイケメンに必死になって謝ると、
彼は明るい髪の毛をふわりと揺らし、イケメンな笑顔と態度でそう答えてくれた。
あああ。見た目も性格も本当にイケメンなお方だーーー!
冒頭で申し上げました通り、イケメンな人たちに対して、
あまり良い印象を持っていなかったあたし。
その価値観、今、揺らいでおります!
あ、もしや……これは……!
選択肢③『やっと最高学年☆イキがり始める諸先輩』ルート発動かー!?
むふふと妄想を膨らませていたが、
見事にその期待には裏切られることになる。