イケメンすぎてドン引き!
☆
「ん、いいよ。確かお前、二次方程式解けないレベルなんでしょ?」
「あ、あれ、あたしそんなこと言いましたっけ?」
「ちょうど俺も1、2年の範囲復習したかったし」
次の日の朝、吉野先輩の姿を見かけたため、数学の件をお願いしてみると、
意外とあっさり引きうけてくれた。
でも……。
「お前、俺と2人でいるとこ見られない方がいいよな。図書室とかはやめとくか」
「市民センター? あ、あそこ他校の人もいるんで、いっつも混んでますよ~」
「んー最近、ファミレスで勉強注意されるヤツ多いらしいし」
「え、あたしの家ですか? すみません汚すぎて無理です~!」
「じゃあ……」
でも、でも。
――これ本当ヤバイっす!
「そこ、解の公式にあてはめて」
「は、はいっ!」
先輩の囁くようなイケボが、耳の近くで発される。
「ルートの中、bは二乗だろ。お前、公式くらいさっさと覚えろよ」
「うぅ……」
だめだだめだ集中できない!
部屋の真ん中にある白い机。
机の角を隔ててあたしと先輩がいて、
その上には問題集やプリントが広げられている。
まわりには漫画やCDが綺麗に並べられた棚。
すぐ後ろにあるベッドの上にはグレーの薄い布団と、3DSが置かれている。
お香の爽やかな香りが漂う、
この2人きりの密室空間。
「何ボーっとしてんの。マジで夏休み無くなるぞ」
「はいぃぃぃ」
無理無理無理無理ぃ!
だってここ、パイセンのお部屋ーーーーー!!!!