イケメンすぎてドン引き!



一通り解き方を教えてくれた先輩は今、目の前で自分の問題集と向き合っている。



シャーペンを軽く握っている右手は、骨ばっていて男の子っぽいけど細くて綺麗。



伏せられた目には前髪がふわりとかかっていて、何だかセクシー。



先輩の親は仕事でいないし、妹さんもまだ学校っぽい。



今、完全に吉野さんのお宅にて、先輩のお部屋で2人きり。



ドキドキしすぎて、喉の奥から心臓の音を感じてしまうほど。



……って、雑念にとらわれすぎだよあたし!


先輩見習ってちゃんと勉強しなきゃ!



そう思い自分のプリントに視線を戻すと、無意識のうちにシャーペンを動かしていたらしく、

ぐちゃぐちゃとブラックホールのようなものが描かれていた。ぎゃー。




「……でも本当すみません。先輩も自分の勉強があるのに」



「あ、俺はいいんだよ。お前と違ってちゃんとコツコツやってるし」



「あたしだってやればできる子ですから! 今回たまたまで!」



「あーうるせー。そこ、途中の式間違ってる」



「げ、ホントだ」



再びお互い自分の勉強に取りかかると、部屋の中が静まり返る。



先輩の家は国道や商店街から離れたところにあって、時々子どもたちの声が響き渡る程度。


窓越しに高低様々なセミの声が聞こえてきた。



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