イケメンすぎてドン引き!







「ごめんなさいっ! あの、好きって言ってもらえて、すごい嬉しかったんだけど……」



「…………」



「気持ちには答えられないです。本当に……ごめん、ごめんね……っ」



足元の砂利にぽたり、ぽたりと涙の粒が落ちていく。



あたしが泣くのは最低なのは分かっている。


でも、止まらなかった。



想いを伝えてくれた人に応えられないことが、こんなにも苦しいとは。


こんなしょうもないあたしのことを考えてくれていた時間を全部、巻き戻してあげたい。



あたしたち以外は誰もいない、自転車置き場奥の倉庫前。



胸が痛くて、もう、とけてなくなってしまいたい気分だ。


もういっそ、汚物くせに調子に乗るな! とののしりながら、あたしに塩をまいてくれよ!


ビンタでもアッパーでもいいし、ハンドボールの全力でのジャンプシュートを当ててもらってもかまいません!(これ怖そう……)



そう覚悟を決め歯を喰いしばった時。



ようやく目の前のもう1つの影がゆっくり動いた。


スニーカーと砂利がこすれる音が鳴る。



「はい……。そうですよね。あーもっと早くオブチさんと仲良くなっとけばよかったー」



「え?」



「俺がうだうだしてただけですし。さすがに吉野先輩じゃ、俺……絶対勝ち目ないですよ」



明るい声でそう言うノリ坊を、涙をぬぐいながら見上げる。



「あ、えーと……」



「はーやっとすっきりしました。って、オブチさんが泣かないでくださいよ~」



ノリ坊はどこか清々しいような表情になっていて、

でも、あたしに触れようとした後、すぐ手を引っ込めた。



ごくりと唾を飲むたびに体の中に苦みが広がっていく。



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