イケメンすぎてドン引き!
こんなにいい子があたしを好きになってくれたなんて信じられないけど、本当に嬉しかった。
中学の頃、テニス部で、男好きな女子たちを何とかまとめながら練習を頑張っていた。
『やば! 今サッカー部そこ通ったよね?』『まじ? 今日ランニングの日だっけ?』
『ねーちゃんと練習しようよー。もうすぐ最後の中総体じゃん』
練習そっちのけで、キャッキャと男子の目線を気にするメンバーたち。
あたしは機嫌を損ねないように声をかけていたっけ。
『オブちゃんはえらいよねー。今さら必死にやったってもう遅いって~』
『うちらオブちゃんみたいに女捨ててないし~。あ、あたし髪型くずれてない?』
『あたしも一応、女子ですからー! ってか、サッカー部またそこ通るんだし、練習頑張ってる姿アピールした方が絶対印象いいでしょ』
『ええ~? ま、確かにそうかも……』『はーい。やるべやるべー』
テニス自体は嫌いじゃなかったし、最初はみんなで頑張ってたから、引退までちゃんと部活がしたかっただけだけど。
そんなあたしは、もちろん他の部員に比べて全然モテず、
男子だけじゃなく女子にも女の子扱いされることはなかった。
だけど、それで良かったんだ。
無理に自分を作らないで、あたし自身のままでいて良かったんだ。
あの頃の自分を見ていてくれた人がいたことで、
どことなくモノクロだった思い出に色彩が与えられたように思えた。
過去の自分をも認めてもらえたような気がした。
人に好きになってもらえることは、こんなにも幸せなことなんだ。
それにしても。
最後までノリ坊は可愛い後輩ポジションをくずさなかったな。
自分のこと計算高いって言ってたけど、これも彼の計算のうちなのだろうか。
いや、単純にいい人なのだと思う。
だって申し訳ない気持ちで涙があふれ出していたのに、今ではそれが嬉し涙に変わっている。
ある意味すごい人なのかもしれない。
ノリ坊のためにも、
あたしもちゃんと自分の気持ちと向き合って、伝えよう。
だって、あの頃、すぐ隣のプールにあたしを見ててくれた人がいたこと、全然知らなかった。
思っていることは、ちゃんと言わなきゃ伝わらないんだ。