イケメンすぎてドン引き!
吉野先輩は鬼のような形相で、あたしとスミスさんに猛ダッシュで近づいてきた。
目が点状態のあたしとスミスさん。
先輩の襲撃をよけるために、本能的にパッとお互いの体を離した。
あたしは急に足腰の力が抜け、床に尻もちをついてしまう。
先輩はガタン、ガターン、と机を倒しながら近づいてきたため、
せっかく整理したプリントたちがぱらりと舞った。
そのプリントがひらひらと床に落ちたのと同時に。
あたしは、窓からの夕日をさえぎる、鮮明な影に包まれていた。
……えっ?
ゆっくり視線を上げると、先輩の広い背中が。
まるであたしをかばうかのように、
あたしとスミスさんの間に入り、両手をひろげている。
「…………」
先輩とスミスさんは見つめあったまま。
教室内が不気味な静寂につつまれる。
先輩越しにスミスさんをチラ見すると、彼は大きな目を更に見開いて固まっていた。
めちゃくちゃ驚いているようで、声も出せない状態らしい。
ってか、『汚物にさわるな!』って……
あたしのこと、スミスさんから守ってくれようとしてるのだろうか。
ドキドキドキと、速まった心臓音はもとに戻らない。
しかし。
「……あ、あははは」
重苦しい空気を破ったのは、吉野先輩だった。
「……ほ、ほら、スミスは詳しく知らないだろうけど、この子、汚物がこびりついたローファー履いてた汚物女子だから、ほら、近づいたら臭いのが移っちゃうし、うかつに触らない方がいいよ、ってこと」
突然、弱々しくスミスさんに言い訳をはじめる吉野先輩。
あ。汚物に触れるなって……
そっちの意味ですかーい!!!