イケメンすぎてドン引き!






厚い雲の切れ間に、まだオレンジ色がかすかに残っている。



野球部やサッカー部などの掛け声はグラウンド方面から、

トランペットやクラリネットの音は下の非常階段から聞こえてきた。



「ぜーぜー。やっと、見つけました」



あたしは屋上のど真ん中、

1人ぽつーんとうずくまっている吉野先輩の後姿に声をかけた。



「あ、オブチさん。さっきは取り乱してすみませんでした」



うつろな目で、吉野先輩はあたしを見上げた。


もう泣いてはいないようだけど、表情が乏しく、声も弱々しく、頬もげっそりしている感じ。



うわぁ。


完全にスーパー欝モード突入中だ……。



「スミスさんから伝言です。友達なんだしさっきみたいにどんどん感情ぶつけてもいいよ、むしろそうして欲しい、って」



「そんなはずないって。絶対嫌われた。スミスにあんなクズな自分の姿見られて。もう学校行きたくない。退学する!」



「何言ってるんですか。だから、スミスさんは喜んでましたって。もともとは、先輩が中々素を見せてくれないって悩んでましたから」



「だって俺クズじゃん。汚物に触れるなーって突然キレちゃったり、オブチさんのこと汚物って言ったり、せっかく並べたプリント全部ばらばらにしちゃったり」



「スミスさんは、そんなんで先輩のこと嫌わないと思いますよ」



さっきスミスさんがしてくれたように、

あたしはしゃがんで先輩と同じ目線になった。



すると、何かにおびえた目のまま、吉野先輩はあたしを見つめる。



部活中の声や音に混ざって、カラスの鳴き声が遠くから聞こえてきた。



「ねぇ、オブチさんは俺から離れていかないよね?」



先輩はあたしの腕をつかみながら、かすれた声でそうつぶやく。



「……はぁ。今さら何言ってるんすか」



思わずため息が出てしまう。



でも、先輩は一体、何をそんなに怖がっているのだろう。


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