あなたと恋の始め方①
「美羽ちゃん」


 たった、自分の名前を呼ばれただけなのに自分の名前が砂糖菓子で出来ているのではないかと思うほどの甘さを感じさせた。名前を呼ばれるだけで顔が赤くなりそうだと思った。もしかしたら実際に赤くなっているのかもしれない。耳が熱い。


「遅くなってすみません。仕事が終わりました。どこに行ったらいいでしょうか?」


「お仕事お疲れ様。今、駅前のカフェにいる。緑のオーニングの店だよ。分かるかな?ここの店は人は多いけどコーヒーは美味しいね」


 緑のオーニングと聞いて思い浮かべたのは駅前のカフェで深緑のシェードに真っ白なロゴで店の名前が書かれていたお洒落な店だと思う。チェーン店のカフェとは違い、コーヒーの味に拘っていると評判の店だけど、コーヒーの値段もかなり高いのに、普段に入るには躊躇するレベルの店だった。でも、フランスで生活している折戸さんはコーヒーの味にも厳しいだろうから、その店にいることに納得する私がいた。


「わかります。じゃあ。今から行きます。ちょっと、待っていてください」


「急がなくていいから。走ったら駄目だよ。転んだら美味しいものを食べれなくなる」



 そう言って、折戸さんはクスクス笑った。走ったらダメとか転んだらとか…。折戸さんの中で私はいったいいくつなんだろう?走らないけど、急いで行こうと思っていた私を柔らかく注意する。


「ではゆっくり行くので、待っていてくださいね」


「勿論。美羽ちゃんが来るまでずっと待っているから、ゆっくりおいで」


「はい」

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