あなたと恋の始め方①
「仕事は終わったのですか?」


 折戸さんは持ってきていたバッグの中に書類を入れようとしている。バッグの中には綺麗に並んだファイルが何冊か見えて、私が仕事で遅れてもいいように仕事をする気だったのだと思った。でも、今日は私が思ったよりも早く仕事が終わり、ここに来ることが出来た。だから、どう考えても折戸さんの仕事はまだ終わってない。フランス支社と日本の支社の違いは分からないけど、出張の場合は早めに報告を上げないといけないはず。


 もしも、ここで折戸さんは仕事を止めたら、きっと私と食事が終わった後にホテルですることになるだろう。それは申し訳ない。


「うん。後は、ホテルに帰ってからでもするからいいよ。美羽ちゃんが来るまでって思っていたから」


「今、して貰えませんか?」


「何で?」


「東京で一緒に仕事をしていた頃を思い出して、ちょっと懐かしかったんです。それと、明日から私も残業続きの予定で、今日くらいは仕事を忘れたいと思って」


 折戸さんの微笑みはとっても優しくて、ドキドキしてしまう。無意識な微笑みは耐性がないとクラクラしてしまいそう。折戸さんと離れてからしばらく経っているから、本社営業一課で出来た耐性は脆く崩れ去っていた。それにフランスに行って洗練された優雅さは前よりも威力を増している??

 
 日本に居る時より幾分伸びた髪が大人の雰囲気を醸し出し、たまに髪をかき上げる仕草に見とれてしまう。

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