あなたと恋の始め方①
 折戸さんがいくつかの寿司を頼んでくれてから、『デート』と前置きのある食事が始まった。でも、本社営業一課に居る時に何度も一緒に食事に行っていた時と変わらなくて、どこがデートでどこが同僚との食事会なのか境目が分からない。話も仕事の話から始まっての折戸さんのフランスでの生活についてだったから恋愛の欠片も落ちてなかった。

 
 でも、そんな折戸さんの話にホッとする私がいる。土曜日にプロポーズされたばかりだったから、二人で食事をするとどういう話になるのか少し心配していた。


 フランスでの折戸さんの生活は興味深いもので、自分のペースを乱すことなく静かに生活を楽しんでいるだった。心配はしてなかったけど、日本ではない海外での生活はどうなのだろうと思ったことは多かった。特に食事とかは気になったけど、自分で作っているという折戸さんに尊敬の念が増す。


「そんなに驚くほどのものは作ってないから」


 そうは言うけど、話を聞いていると一人暮らしの長い私でも作らない料理を作っていた。

 
 白身のヒラメから始まったお寿司は折戸さんと職人さんの間で何を食べるかを決められていく。『おすすめだよ』と言って目の前に置かれたトロは驚くほど甘く口の中で蕩けた。驚く私を折戸さんと職人さんは満足そうに見つめている。


「美味しいです」


 本当に美味しかった。こんなに口の中で蕩けるようなトロを食べたのは初めてで、驚く。脂のしつこさもなくサラリと食べられる触感が堪らなく美味しい。
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