あなたと恋の始め方①
『ああ。大丈夫だ。…。自業自得だろ。』


 そんな話をして、折戸さんは小林さんとの電話を切ってしまった。そして、私の方に携帯を差し出しながらまた穏やかに笑う。何を話しているのか分からないし、さっきの折戸さんの自業自得の意味も分からない。


「急にごめんね。俺が説明した方がいいと思ったんだ。美羽ちゃんには説明が難しいと思って」


「私じゃ本当に説明出来なかったし、店の名前もわかんなかったので」


「ほらここに小さく看板はあるけど、知らないと見過ごすんだ」


 そんな折戸さんの指先に小さな真鍮で作られた看板には【after2】とあり、微かな灯りが漏れているから、そこに何かあると分かるくらい。


「入ろうか?」

「はい」



 折戸さんがゆっくりとドアを開けると、そこには数人しか座れないカウンターがあり、そこにはバーテンダーが一人いる。白いシャツが薄暗い店内に眩しく感じる。私と折戸さん以外には二組のお客さんがいるだけであとは誰も居ない。微かに音楽が流れているけど人の話を邪魔するものではない。ゆっくりとした時間を楽しむためにセレクトされたものだと思った。


「いいですか?」

「はい。どうぞ」


 お酒と談笑を楽しむ場所であるこの店は淡いオレンジ色の炎がユラユラと揺れるキャンドルがカウンターに置かれてある。淡いキャンドルの光りにドキッとしてしまった。ここは…どちらかというと大事な人と来る店だと分かる。私たちが座ると温かいお絞りが渡され、真っ白なコースターがカウンターに置かれた。
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