あなたと恋の始め方①
 いきなりの事で驚いたのか小林さんの周りだけ時間が止まったかのように動かなかった。車のドアを開けたまま小林さんは私を見つめていた。その視線の鋭さに私も身体の動きが止まる。いきなりフランス留学とか言われて驚かない人はいない。それは小林さんもだった。


「何の話?あ、とりあえず車の中に乗って、遅くなるから運転しながら聞く」


 そんな小林さんの雰囲気に押されるように車に乗り込むと小林さんは私の方を見て安心させるかのように笑うと車のエンジンを掛けたのだった。そして、駐車場を出て、私のマンションに向かって走り出す。


「さっきの話の続き聞いていい?」


 この時間は車も多く、渋滞もあるのでそんなにスピードも出ない。そして、小林さんは信号で止まった時にそう言ったのだった。私はというと小林さんにどういったらいいのか迷った。まだ、何も決まってない状態でどこまで話せばいいのだろう。自分の中で物事を端的にいうしか出来ないとは思うけど、難しかった。


「フランス研究所と静岡研究所内で交換留学の話があります。その候補に私の名前もあるそうです」


 小林さんはフッと息を吐いて…。


「青になったから動かすよ」


「はい」



 小林さんは車を運転しながらも何も言わなかった。もっと何かの反応があるかと思ったけど何もなくて…さっきの私の言葉が聞こえてなかったのかとさえ思うほどだった。


「折戸さんがフランスから帰国した理由って交換留学の件があったから?」

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