あなたと恋の始め方①
 本人を前にしては絶対に言えない言葉だった。それは私の思いが好意ではなくて、恋。こんな風に一緒にいると幸せになり、ずっとこのまま時間が続いて欲しいとさえ思う。嫌われてはないと思うけど、もしも小林さんが私に対する優しさが『好意』だったら。私の恋心が距離を遠くしてしまいそうで怖かった。


 今のままの距離と縮めたいと思うのに怖い。もしも、私の思いが空回りだったら、こんな風に迎えに来てくれるのも小林さんが優しすぎるからだったらどうしよう。小林さんは初めて会った時から優しかった。そんな優しさを私は勘違いをしているのかもしれない。


 自分の気持ちがもどかしく苦しい。お酒に少し酔っていたけど、それだけでは答えに出来ないくらいに小林さんへの思いが募っている。しばらくして車に戻ってきた小林さんの手には小さな袋が下げてあった。


「お待たせ。行こうか。美羽ちゃんがどこか行きたいところがあるなら連れて行くし、ないなら、美羽ちゃんのマンションに送るよ」


 どこと言われても夜中の11時を回った今、行く場所なんかない。でも、もう少し一緒に居たい気持ちもあって複雑な思いで私は助手席に座っていた。でも、この後、小林さんが自分のマンションに戻って寝るとなると明日の仕事に差し障ると思った。簡単なフローチャートなのにその答えを捻じ曲げてしまいたくなる。


 もっと一緒に居たいと言いたかった。でも、私にはそんなことは言えなかった。


「マンションまでお願いします」

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