あなたと恋の始め方①
 いつもよりも早く出たからかマンションから駅までの道は変わらないのにいつもと違う雰囲気を漂わしていた。いつもよりも30分早いだけで、こんなにも違うのだろうかと思うほどで驚く。私がいつも出勤する時間は小学校に向かう子どもがいたり、綺麗な服をきた女の子がいたりとどちらかというとふんわりとした感じなのに、今は驚くくらいに違う。


 どちらかというとスーツ一色という感じ。女の人もいるけど、その女の人もスーツを着込み、男の人に負けないように会社に向かうような雰囲気。研究所に勤める私はスーツなんか着てないし、大学生の延長のような洋服で周りのスーツの一群の中、明らかに浮いていた。


 そして、朝からゆっくりしようと思って寄ったカフェで現実を見た。カフェの中はサラリーマンでいっぱいで、私が入る隙間もない。それに店の前から外まで列が出来ていて…コーヒー豆さえ買うことも難しそうだった。美味しいコーヒーを優雅に飲み、仕事の向かうというささやかな夢が消えた瞬間だった。


 でも、店の外に続く列も店の中に入るだけではなくテイクアウトで店の外に出る人も多々いるので、このまま並んでいれば私も座ることは出来るだろう。でも、私が思う優雅な時間は難しい。


『研究所の最寄りの駅でコーヒー豆を買って、コーヒーは研究室で飲もう』


 これが私の出した結論だった。


 目当てのカフェの前を通り過ぎ、そのまま駅に向かう。確かにこの時間は電車は満員だろうけど研究所までそんなに時間も掛からないから、そのまま行くことにした。


 
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