あなたと恋の始め方①
手摺りだけが頼りなのに徐々に手が離れそうになってしまう。この手摺りだけが私を支えるものだった。徐々に手が汗で滑り出し、そして、ドアが閉まると同時に私の手が手摺りから外れたのだった。
『あ…』
息を吐いたような声以外を出す暇もなく私の身体は流れていく。満員電車のことを私は甘く見過ぎていた。
たくさんの人がいるから転ぶことはない。でも、揺れに任せ不安定だし、今からもたくさんの人は乗ってくる。手摺りは遥か先にあるし、吊革も私が掴まる隙間はない。電車が揺れる度に私の身体も揺れ、不安定な中、どうしようかと思っていると、不意に後ろの方から私を呼ぶ声が聞こえた。それは周りの人に聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声だったけど、私には聞こえたのだった。
「美羽ちゃん」
ゆっくりと身体を捩ると、少し離れた所に小林さんがいた。小林さんは明らかにドアの近くに居て、私よりも後に乗ってきたようだった。でも、小林さんの乗る駅は私よりももっと早いはず。なのに、なんで小林さんが私の後に乗ってくるのだろう?
私と視線が合うと小林さんはフッと目を細め、ニッコリと微笑んだ。そして、電車の揺れに合わせて徐々に動き、三つ目の駅のドアが開いたと同時に私の横に立っていて自分の方に私の身体を引き寄せるのだった。さっきまで周りに押しつぶされそうだったのに、身体がふわっと楽になった。
「おはよう。美羽ちゃん」
『あ…』
息を吐いたような声以外を出す暇もなく私の身体は流れていく。満員電車のことを私は甘く見過ぎていた。
たくさんの人がいるから転ぶことはない。でも、揺れに任せ不安定だし、今からもたくさんの人は乗ってくる。手摺りは遥か先にあるし、吊革も私が掴まる隙間はない。電車が揺れる度に私の身体も揺れ、不安定な中、どうしようかと思っていると、不意に後ろの方から私を呼ぶ声が聞こえた。それは周りの人に聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声だったけど、私には聞こえたのだった。
「美羽ちゃん」
ゆっくりと身体を捩ると、少し離れた所に小林さんがいた。小林さんは明らかにドアの近くに居て、私よりも後に乗ってきたようだった。でも、小林さんの乗る駅は私よりももっと早いはず。なのに、なんで小林さんが私の後に乗ってくるのだろう?
私と視線が合うと小林さんはフッと目を細め、ニッコリと微笑んだ。そして、電車の揺れに合わせて徐々に動き、三つ目の駅のドアが開いたと同時に私の横に立っていて自分の方に私の身体を引き寄せるのだった。さっきまで周りに押しつぶされそうだったのに、身体がふわっと楽になった。
「おはよう。美羽ちゃん」