あなたと恋の始め方①
 それは私も思っていたことだった。小林さんといるといくら時間があっても足りないと思ってしまう。そして、研究一筋だった私が同じように研究所に行きたくないと思ってしまった。


「そうですね。でも、仕事には行かないと。私も研究所に行かないといけないです」


「俺ともう少し一緒に居たいと思う?」


 残念な声が出ていたのだろうか?そんな思いで見つめると小林さんは私を見つめていた。


「仕事終わったら連絡して。俺も残業だし、美羽ちゃんも残業。もしかしたら終わる時間が近いかもしれない。約束は出来ないけど、もしも、仕事が終わって時間が合えば会おう。10分でもいいから会おう」


「え?」


「俺が美羽ちゃんに会いたいから時間作って」


 小林さんも残業で…。
 私も残業。


 もしかしたら少しでも会えるかもしれないと思うと顔が緩む。今日、研究で忙しいと思うのに、その先にご褒美が待っているような気がする。


「でも、いつ終わるかわからないです」


「じゃあ、俺の仕事と美羽ちゃんの研究のどっちが早く終わるか競争しない?」


「競争?」


「そう。頑張って仕事を早く終わらせて会おう。さ、バリバリ仕事して美羽ちゃんに会いに来るぞ」


 そう言って笑う小林さんを見ながら、私も頑張らないといけないと思った。最初は残業でもしかしたら会えるかもと言っていたのに、いつの間にか、小林さんの中では早く終わらせて会うことになっている。実際に仕事とか研究を考えると会えるかどうか分からない。でも、頑張れば会えるかもしれないと思ったりもする。


< 188 / 403 >

この作品をシェア

pagetop