あなたと恋の始め方①
『仕事は終わったの?無理してない?』


 小林さんからのメールも私のメール以上にアッサリとしている。さっきは仕事を終わるまでと言っていたのに急にメールして帰るというのだから、小林さんが驚くのも仕方ないこと。でも、目の前の中垣先輩の姿が目の前に映ると、もうこの場を離れないといけないのはアリアリだった。

『はい。今日は終わりです』

『まだ研究所の近くに居るからすぐに行く。研究所の前で待ってて』


『お願いします』


 私がメールを終えて、中垣先輩の方を見ると、先輩はじっと私を見つめていた。これは私の答えを待っているというのは分かる。


「まだ、研究所の近くにいるそうです」


 そういうと、少しホッとしたような顔をしたかと思うと、ポケットからセキュリティカードを取り出した。


「そう。それなら良かった。準備が出来たらセキュリティ掛ける」


「はい。もう荷物を持って出るだけです」

「じゃ、先に出ろ」



 部屋を出て、そのカードを差し込むとカチャリと電子ロックの掛かる音がして、フッと研究室が暗くなった。研究所ではいつも緊張の連続。その緊張が抜ける瞬間が私はとても好きだった。


 中垣先輩はセキュリティカードを総務室に持っていくと、それから一緒に玄関に向かって歩き出した。


「俺が言うことではないが、フランスの留学の件は真剣に考えた方がいい。坂上にとってこんなチャンスは中々ないと思う」

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