あなたと恋の始め方①
 私はどうしたかったのだろう?まだ一緒に居たいと思う気持ちはあった。でも、夜を一緒に過ごすというまで、まだ気持ちは追い付いてない。恋愛経験は皆無だけど、大人の男女が夜を一緒に過ごすという意味がわからないわけではない。


 自分の部屋に入ってホッとはする。でも、さっきまで一緒だったからか寂しさも募る。


 午前0時10分。
 シンデレラの時間は終わっていた。

 いつもは何にも思わない自分の部屋が殺風景に感じる。朝、出た時と変わらないのにこんなにも殺風景に感じるのは私の気持ちが小林さんと一緒に居た時間が楽しく感じたから。


「なんでこんな自己分析するんだろ」


 何度も自分自身の言葉を反芻するのは研究員としての性かもしれないと思いつつ、面倒臭い性格に辟易してしまった。


「考えても仕方ないから。寝よ」


 小林さんに迎えに来てくれたお礼のメールに最後のところに『ニコニコ』の絵文字を一個だけ入れて、送信。そして、シャワーを浴びて、ベッドに潜りこんで、天井を見上げ、『小林さん。おやすみなさい』と呟いた瞬間、バッと私は自分の身体を起こした。


『今度の土曜日はずっと一緒にいる?美羽ちゃんが望むなら日曜も全部』


 小林さんの言葉が急に頭に過ぎり…。色々なことが頭に浮かびだしたから、さっきまでの心地よい眠気が一気にどこかに走り去ったような気がした。


「眠れないかも」






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