あなたと恋の始め方①
 私は研究所の休憩室に行くと、窓際の席に座り息を吐く。窓の外には綺麗な緑が見え、その緑を見ながら癒される私がいた。パソコンがフリーズしたので落ち込んでいるわけではない。


 ただ、初めての恋と仕事とのバランスを崩している自分のプライベートとオフィシャルの部分の切り替えの拙さに溜め息が止まらないだけ。


「なにやっているんだろ」


 そんな呟きが零れる。パソコンのフリーズは私のせいじゃない。でも、小まめにバックアップを取らなかったのは私の失態に他ならない。


 一生懸命打ち込んだ研究データが消えてしまった。いつものコーヒーが苦く感じるのは私の心の余裕の無さの表れ。こんな日は甘いカフェオレにすれば良かった。


 甘さも時には必要だと思う。


 どのくらいの時間が経ったのかわからないけど研究室を離れたのが良かったと思う。『また、打ち込んだらいい』と前向きに考えていけるようになると、急に土曜日のデートのことが気になりだした。何を着ていったらいいのだろう?残念なことに可愛らしい服も持ってない。


 小林さんと付き合いだして、初めてのデートならやっぱり可愛いと思われたいから、お洒落をしていくべきなのだと思うと悩む。


 正直、私は私服の数が少ない。研究室とマンションを行き来する生活だし、必要性は感じなかった。でも、今度の土曜日は絶対に可愛い服か必要。でも、研究室に缶詰状態で可愛らしい服を買いに行く時間すらない。


 自分のワードローブを思い出し溜め息を零すしかなかった。
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