あなたと恋の始め方①
 少し緊張している私に気付いたのか、住田さんはニッコリと微笑んでくれて、その微笑みに少しだけ気持ちが緩む。


「あの。私、坂上さんに聞きたいことあって。中垣主任研究員って怖くないですか?いつも怒ってますよね。眉間にスッゴい縦皺が入ってますもの」


 そんな川田さんの言葉に納得する私がいた。中垣先輩はいつも仏頂面だし、愛想なんか言葉さえ知らないのではないかとさえ思う。でも、中垣先輩は怒っているのではなく考え事をしているだけ。長く一緒にいるから分かったことだけど、最初の頃は川田さんと同じようなことを思っていた。


「あれは考え事をしているだけですよ」


「え?本当ですか?」



「中垣先輩は大学の時から一緒に研究をしていますが、怖くはないです。気難しいところはありますが、結構優しいです」


「分からないものですね。でも、フランス支社の折戸さんは優しいのが一目瞭然ですよね。水曜日は高見主任と折戸さんのことで、坂上さんがめちゃめちゃ羨ましがられていたんですよ」


 折戸さんは見た目もだけど、中身も本当に優しい。一緒にいるといつも穏やかな気持ちに包まれる。


「あんな素敵な人の彼女って幸せでしょうね」


 川田さんはうっとりした口調で少し空を見つめ溜め息のような甘い息を漏らす。そんな川田さんに本当の意味での溜め息を零したのは住田さんだった。


「優奈の今の言葉。後で、後藤さんにメールしてあげる」


「え?。それはダメ」


「だよね。さすがの後藤さんでも他の男をべた褒めする優奈は許してくれないわよ」


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