あなたと恋の始め方①
「お…おはようございます。すみません。遅くなりました」


 日頃から研究室に籠ってばかりで運動不足の私は簡単に息が切れる。さすがにちょっと走っただけでこの息の切れ方を考えると定期的に運動もしないといけないなとこういう時に切に思う。それにしても私って足が遅すぎる。自分に溜め息を零しながら、見上げると小林さんはいつも通りの優しい笑顔。でも、ちょっと走ってきた私を見て不思議そうに首を傾げた。


「おはよう。美羽ちゃん。約束の時間にはまだあるのにどうしたの?時間間違えた??」


「え?」


「待ち合わせは九時なのに、今はまだ八時十分だよ」


 そんな小林さんの言葉に私は心底ホッとする。私が時間を間違えたわけじゃなかった。私よりも小林さんが早く来ていただけ。それにしても早すぎる。


「時間を間違えたかと思いました。用意が早く出来たので駅に来てカフェでジュースでも飲もうかと思ってました」


「うん。俺も早く起きすぎたから出てきた。遠足の前の小学生気分って感じに似てる。自分でも笑えるけどかなり浮かれていると思う。でも、そのお蔭で美羽ちゃんと早く会えたからよかった」


 そんな悩殺ものの無邪気な笑顔でサラッと言われると急にスイッチが入ったかのように心臓の音が煩くなる。ドキドキは止まらなくなって、朝からこの調子だったら、夕方には心不全になってしまうんじゃないかと思うくらいに激しく音を立てていた。
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