あなたと恋の始め方①
 小林さんの言葉に顔が一瞬で赤くなるのを感じた。『肩を抱いて』だなんて…。想像しただけでも心臓に悪い。多分、これが小林さんの中での大人の距離感なのかもしれない。でも、勿論、言われるがままに小林さんの腕の中に入っていく勇気は持ち合わせていない。どれか選べというのなら…私が迷わず選ぶのは…。


 普通に手を繋ぐこと。


 私はゆっくりと差し出された手に自分の手を重ねたのだった。すると、そんな私の様子を見て小林さんは満足そうに微笑んだ。


「では美羽ちゃんのお好みに合わせて、今日は『高校生気分』を満喫しよう。それでいいかな?」


 小林さんの言葉に頷くと繋がれた手がゆっくりと引かれて、駅の構内に入っていく。今日は電車で出掛けることになっているから、駅に入っていくのは分かるけど普通電車の乗り場ではなかった。


「あの、どこに行くんですか?」


「夢の国って言ったら分かる?」


 まさか、そんなに遠くまで行くとは思わなかった。私は近場の遊園地を考えていたけど、小林さんの考えは違うようで正直どうしようかと思った。でも、小林さんは何も私のような不安は感じてなかった。


「高校生ってそんな遠くまでデートに行くんですか?」


「うーん。行かないかも。でも、高校生のように電車で行くけど、一応、大人なんだから、いいと思うけど。美羽ちゃんは遠出は嫌?」


 嫌というか正直驚いたという方が正しい。でも、まだ朝の八時を過ぎたくらいの時間だから、今から行くのに不都合はない。

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