あなたと恋の始め方①
「美羽ちゃんは仕事ではスパッと決断するのが早いのに、こういうのは悩むんだね」


 仕事は決断を迫られたら勿論、自分の心の赴くまま決断する。そうじゃないと、自分の研究結果に自信が持てないし、いつになっても先に進まない。でも、これは違う。選択肢が多すぎる。それにどれも可愛すぎる。少し悩んで、いくつかの候補を選んで、それからまた悩んで…。やっと決めた。


「これにします」


「ん」


 そう言うと、小林さんはサッとそれを私の手から取ると、同じの物の色違いをサッとワゴンから取ってチケットケース売りのお姉さんに渡した。私は赤で小林さんは青。初めてのお揃いの物で、お金は小林さんが一緒に払ってくれて、チケットを入れて私の首に掛けてくれたのだった。


 自分の胸に下がるチケットケースを見ながら、嬉しさがこみあげてきた。他にも色々あるのに、小林さんが私と色違いのお揃いを選らんだことも嬉しさを倍増させた。


「ありがとうございます」


「どういたしまして。じゃ、行こうか」


 私がお礼を言うと、小林さんは今日のスタンダード。私の手をゆっくりと握ってきた。そして、ちょっと腰を屈めて、私の耳元に囁く。囁くような甘い声はいつもの爽やかさとは少し違い、違った意味でドキドキする。


「今日の美羽ちゃんは可愛い」


 赤面する私をよそに小林さんとの初めてのデートはこうして緩やかな時間を刻みだしていた。

< 237 / 403 >

この作品をシェア

pagetop