あなたと恋の始め方①
 小林さんが外に出たのと同時に会計をしようとしていた女の子の列が一気に進む。どうも私の前の前にいた女の子三人組がレジで割り勘をしていたみたいで時間が掛かったようだった。その女の子たちの会計が終わると私の会計の順まではすぐだった。


 二人分のケーキとコーヒー代を払うとなんとなくホッとして、私も小林さんの後を追ってカフェを出たのだった。私の予想では小林さんはカフェのすぐ近くにいると思ったのに、居るであろうと思った場所に小林さんの姿はなかった。どこに行ったのだろうかと辺りを見回すとカフェから少し離れた場所に小林さんの姿が見えた。そして、手には携帯を持っていて誰かと話している。


 カフェの周りは少し騒がしいから、話が出来るように少し離れた場所に移動したのだろう。カフェから出てきた私を見つけると、軽く手を挙げて私に合図しながらも真剣な表情は崩さない。視線が合うと、少し困ったような表情をするから大事な話をしてるのだろうと思った。


 こういう時はどうしたらいいのだろう。ここにいると小林さんに気を使わせるだけだと思った。だから、私は小林さんに視線を向けると、カフェの先にあるグッズを売っている店を指さした。


『あそこにいますね』


 多分、私の気持ちは分かってくれたのだろう。小林さんはそんな私を見つめ頷くと、片手を顔の前に出し、『ゴメン』と唇を動かす。小林さんの電話が終わるまでお土産でもみようと思った私の気持ちは通じたようだった。いくら彼女でも踏み込んで行けない場合がある。こと仕事に関しては踏み込むべきではない。


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