あなたと恋の始め方①
「逃げないで。ちょっとだけこのまま」


「周りに人がいます」


「いや?」


「嫌じゃないけど恥ずかしい」


 まだ、昼を過ぎたくらいの時間だから少し離れた場所にはたくさんの人が歩いている。だから凄く恥ずかしいのに、小林さんは何とも思ってないのだろうか?腕の中で身を固くする私に小林さんはもう一度耳元で囁いた


「みんな幸せだから、誰も俺たちのことなんか見てないよ。それにしても美羽ちゃんの言葉は反則過ぎる。可愛い」


 今の会話のどこに可愛いという要素があったのだろう?小林さんのツボが私には分からない。


「何が反則なんですか?」


「嫌じゃないっていうの」


 ベンチから離れたところだし、どちらかというの通路からも外れた場所にいるから抱きしめられた私が目立つことはない。でも、私は自分の心臓の音と、小林さんの温もりでどうにかなりそうだった。


「でも」


「恥ずかしいなら目を閉じてて」


 そんな言葉にキュッと目と閉じると、私の身体が少し震えたのを感じたのか小林さんは私の身体をさっきよりももっと強く抱き寄せた。何度もドキッとし続けて恥ずかしいから目を閉じると少しだけ気持ちが落ち着いてくる。でも、恥ずかしいのと嬉しいのとが入り混じる自分の心の安定は難しい。


「これって高校生デートですか?」


「うーん。今どきの高校生はもっと凄いよ。高校生デートとは言ったけど、そこまで我を忘れるほど周りが見えなくなることはないから大丈夫。少しだけ美羽ちゃんに触れていたい」

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