あなたと恋の始め方①
 しばらくしてこの恥ずかしく甘い時間を破ったのは小林さんのお腹の音だった。さっき、ケーキを食べたばかりなのにもうお腹が空いたのだろうか?


「マジでムードない俺の腹」


 私の身体を抱き寄せる腕の力を緩めながら笑う小林さんに向かって私は言う。


「ワゴンで何か食べましょ」


 先にチケットを取ったアトラクションを効率よく回り、空いた時間を二人で話しながら過ごす。園内のあちこちにあるワゴンでホットドックやらポップコーンを買ったりして、二人で食べながら時間を過ごしていると明るく広がっていた青空は何時しかオレンジ色の輝きで道、そして、次第に青みを増していき群青色に染まる。


 そんな蒼空を見ながらなんて幸せなんだろうと思う。小林さんの横で見つめる群青色の空はとても綺麗で胸が苦しくなる。もう一日の終わりが近づいてきていた。楽しい時間が過ぎるのは早すぎると思うけど、時間はただ決まった通りに時を刻むだけ。


「楽しい時間は早すぎるよ」

 私の心を読み取ったかのような言葉に頷いた。そして、何も考えてないのに小林さんのジャケットとキュッと握る私がいる。時間が止まったように、周りの音も何もかも消え、私の感覚の全てが小林さんに集中しているのを感じる。


「小林さん」

「ん?」

「…好きです」


 自分自身の発した言葉は衝撃的だった。自分でもどうしてこんな言葉が私に浮かんだのか説明できない。でも、そこ言葉を受け止めるかのように小林さんは少し強く私を抱き締めた。強く抱き締められると息が苦しくなり、言葉にすると恋心を実感する。

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