あなたと恋の始め方①
「俺も好きだよ。でも…」


 大事なものを抱くように小林さんは私の身体を抱き締めてくれた。フッと身体が緩むと、そこには小林さんの綺麗な顔があって、好きという気持ちが身体の中から溢れてしまいそうになる。昼はあんなに恥ずかしかったのに、少し群青色が私の染まる頬を隠してくれるからか、私は小林さんに甘えた。


「でも…?」


「これ以上は無理かもしれない。美羽ちゃんがあまりにも可愛すぎて高校生で終われる自信がなくなる。俺の理性が続くことを祈ってて」


 そう言って笑う小林さんは腕の力を緩め私の身体を自由にすると、ゆっくりと私の前に手を出した。『高校生デート』を続行するとのことだと思った私は小林さんの手に自分の手を重ねた。


 私が小林さんの手に自分の手を重ねるのが今日のスタンダード。指が自然に絡まる。でも、フッと指の絡まりが解かれ、小林さんは私の腕を取ると小林さんの腕に絡ませた。野球で鍛えた小林さんの逞しい腕に自分の身体を寄せると、近い距離で小林さんを見上げる形になってしまう。


 すると、小林さんは私の頭をポンと撫でた。そして少し照れたように無邪気に笑う。


「大学生でいいかな?俺の理性は30秒だったみたい。このくらいいい?高校生デートはもう無理みたいだ」


 小林さんの中で高校生デートは終わったらしい。手を繋いで歩くのと、腕に捕まって歩くのの違いを知ったのは二人で歩き出してすぐの事。触れている右半身から小林さんの体温を感じ、声が少しだけ肌越しに響く。


「嫌じゃない?」

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