あなたと恋の始め方①
 唇を離し、腕を緩めると、小林さんは私の方を見て、ニッコリと笑った。そして、小林さんは私の頭を自分の肩の方に引き寄せた。視線は目の前に繰り広げられる花火から目を離さず、そのままなのに、私は小林さんから視線を外せない。


「そんなに見られると止まらなくなるから」

 
 そんな愛しい呟きに…。私は恋愛初心者にも関わらず、もっと止まらないで欲しいと思ってしまった。綺麗な花火が漆黒の空を彩り美しいのに、私の全てが横にいる小林さんに向かっていて、こんな風に感じ、恋をする自分が幸せだと思った。


『止めないでいいです』


 一際大きな花火の音が響いたかと思うと、何を言っているのか聞こえないけどスタッフらしき人がマイクで話してる。微かに聞こえたのはショーが終わったということだった。そのマイクの声に合わせるように一気に人が動き出す。小林さんしか見えなかった私だけど、こうやって一気に動き出す人を見て、近くにこんなに人がいたのだと気付いた。


「美羽ちゃん?」


 そんな小林さんの言葉にフッと現実の世界に戻る。見上げると私を覗き込む優しい笑顔。でも、私の様子を心配してか、少しの翳りを見せている。


「今日が楽しすぎたから、終わるのが寂しいと思ったんです」


「それならいいけど、いきなりキスしてゴメン。美羽ちゃんが好きで止まらなかった」


 私も同じ気持ちだった。

< 279 / 403 >

この作品をシェア

pagetop