あなたと恋の始め方①
 昨日の自分に戻れるなら川田さんと住田さんにもう少し恋愛の話を聞いておけばよかったと後悔する。確かに甘すぎる話で自分にはレベルが高いと思ったのも事実だけど、もしも経験談を聞いていたら、これから自分がどんな振る舞いをしてらいいのかのヒントくらいはありそうなのにと思う。溜め息を零しながら私はソファに座っていた。


 どうしよう。どうしよう。


 ホテルのロビーに置いてあるソファはとても豪華でクッションも柔らかいだけでなく座り心地もいい。だけど、今の私には緊張のあまりに居心地の悪い場所でしかない。自分の膝の上でキュッと手を握るしかなかった。前を見るとカウンターの方で小林さんがチェックインの手続きをしている。


 遊園地の閉園と同時にこのオフィシャルホテルはたくさんの宿泊客を受け入れていて、チェックインには時間が掛かりそうだった。小林さんもチャックインをする人の列に並んでいるけど、小林さんは体格がいいからか後ろの方から見ていても目立っていて、小林さんの姿はチェックインをする人の中でも一際眩しく見えた。


 背の高さも肩幅の広さも周りの人よりも大きく逞しい。そんな後ろ姿にドキッとしてしまう。今夜は初めて小林さんと一緒に過ごす夜だから、緊張はするし、どうしようとも思うけど、それでも少し嬉しいと思うのは恋心からだろう。


 一緒に夜を過ごすという意味が分からないほど私は子どもではなかった。

< 288 / 403 >

この作品をシェア

pagetop