あなたと恋の始め方①
 まるでさっきの光景をやり直しているようだった。目の前にはやはり宿泊のためのチェックインをする客が並んでいて、その中にひときわ輝く小林さんの姿がある。小林さんの手にある二枚のカードキーは今度戻ってくる時は一枚になっているだろう。


 息をゆっくりと吐くのにドキドキが収まる気配はない。それでも何度目かの深呼吸を繰り返していると周りが見えてくる。さっきは緊張しすぎて見えなかったものが見えてくる。


 このホテルは遊園地の近くにあるオフィシャルホテルだから、その雰囲気を壊さないかのように豪華な作りで天井から下がっているシャンデリアがキラキラと輝いている。ピカピカに磨かれた床は大理石だし、ロビーから続く階段は手摺りのロートアイアンの漆黒がしっとりとした落ち着きを醸し出す。淡いアイボリーの大理石に包まれた空間に光るのはクリスタルのシャンデリアとその大理石の中で漆黒のロートアイアンは空間を締めている。


 本当に綺麗。


 急に泊まることになったとはいえ、ここは贅沢なほどのリゾートホテルで見れば見るほどに豪華さを感じさせる。ビジネスホテルでもどこでもあるのに、この綺麗なホテルと選んでくれたことに小林さんの優しさを感じずにはいられなかった。夢のような世界を楽しんできて、今もまだ夢の中を漂っているかのように錯覚するほどの煌めく空間がそこには広がっている。


 まだ夢の時間は続いている。
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