あなたと恋の始め方①
 私の最大限の勇気がこの優しい人にこんなに幸せそうな表情を浮かべさせる。きっと私の勇気は小林さんに届いたのだろう。でも、私の勇気が小林さんの笑顔を引き出すことが出来るというのなら、こんな幸せなことはないと思う。いつからだろう。好きという気持ちだけでなく、小林さんが誰よりも幸せになって欲しいと思うようになったのは?


 静かにそして確実に私と小林さんの恋は育まれていく。



「ありがとう。嬉しいよ。その言葉が今、欲しかった」


「小林さんが好き」


 私がもう一度そういうと、小林さんはさっきよりも強く抱きしめてくれた。逞しい腕に包まれていると何も考えられなくなる。自分たちの部屋に戻る微かな時間だけど、一歩歩く毎に幸せに包まれる。回りにはたくさんの人で溢れているのに、私は小林さんしか見えなかった。そして、小林さんにも私しか見えないで欲しいと思う独占欲に自分で驚いた。


 恋をするというのはなんて貪欲になるんだろう。


 私は今までこんなに人を求めたことはない。ただエスカレーターを流れるように生きてきた。そして、そのまま私の人生は穏やかな凪のように過ごせたと思う。


 でも、私は出会い、恋をした。


 こんなにも人を愛し、人を求め、貪欲な自分に対峙する。それも幸せだと思わずにはいられない。今はただ小林さんの傍に居たいと思うだけ…。

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