あなたと恋の始め方①
 私は決めた。


 自分から小林さんの胸に飛び込もうと。きっと、さっきの私の様子から小林さんは私のことを抱くつもりはないと思う。でも、私は小林さんが私を抱きたいと思ってくれたように私も小林さんに抱かれたい。大好きという気持ちを伝えたい。


 実際に飛び込むのは小林さんの胸の中だけど、気分は清水の舞台から飛び込むって感じかもしれない。


『私を抱いてください』


 きっとその言葉だけで小林さんなら察してくれるはず。


 それから、もう一度身体を綺麗に洗い、ついでにマッサージなんかもしてみた。少しでも綺麗と思われたい女心が私にもあった。芳しい花の香りに包まれて、私はいつも以上に念入りに身体を洗い、髪を洗う。艶々な髪にシャワーのお湯が流れ、背中に綺麗な弧を描く。もう一度頭からお湯を浴びて私は心を決めた。


『頑張れ。私』


 私はバスルームを出ると、丁寧に身体を拭き、小林さんと同じバスローブを纏う。そして、そのまま髪にドライヤーを掛けることにした。さっきの小林さんのように部屋に戻ってからでもいいかもしれないけど、心を決めたはずなのに心の弱さから、『ドライヤーが終わってからね』と自分に言い聞かせた。


 鏡の中の私は緊張が隠せない表情をしていて、臆病な気持ちを隠すかのように私は鏡越しの自分を睨み付けた。緊張で泣きそうになる私は自分を叱咤激励するしか私には出来なかった。

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