あなたと恋の始め方①
 一日の疲れが蓄積された身体は沈み込むように眠りの中に落ちていく。夢さえも見ないそんな深い眠りから少しずつ意識が浮上し始めたのはカーテンから差し込む光が徐々に白い筋を描き出した頃だった。起きる時間にはまだ早いことは分かる。もう少しこのまま寝ていようと思った時…。


 それは突然のことだった。


 小林さんの身体が寝返りを打ったかと思うと、そのままの勢いで私の身体を後ろからギュッと抱きしめたのだった。いきなりの小林さんの行動に意識が一気にクリアになった。さっきまで寝ようとしていた私の眠気を一気に追い払い、意識は完全に戻ってくる。強張らせた私の身体は小林さんの腕に包まれていて、私の身体は小林さんの抱き枕状態になっていた。


『どうすればいいの?』


 緊張するだけの私は小林さんの腕に包まれてたまま、動けずにいた。枕元の時計を見ると、まだ時間は五時半だから起きるのにはまだ早い。後ろから抱き寄せられているから小林さんの表情は見えないけど、規則正しい寝息も聞こえているから、起こしたくないと思った。でも、このまま時間を過ごすのも心臓がもちそうもない。


 そう考えると、少し早いけど起きた方がいい。そして、小林さんが起きる前に化粧をしよう。普段からほぼ素肌に近いけど、一緒にいる時間くらいは少しでも綺麗だと思われたい思いが湧き出てくる。とりあえずベッドから出ることにした。

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