あなたと恋の始め方①
「ごめんなさい」


 私がキュッと裾を掴んで足を隠そうとするけど、バスローブはそんなに長くなくて、今度は胸元が引っ張られる。これは自分の服に着替えないとどうしようもない。でも、こういう時、普通の恋人同士はどうするのだろう?答えが分からない。


「俺、バスルームで着替えてくる。美羽ちゃんはその間にここで着替えて。着替えたら食事も行こう」


 そういうと小林さんは自分の服を持ってバスルームに消えて行った。私はというと、ベッドの上でバスルームの胸元を掴んでいた手を緩め、押さえていた裾も放すとベッドから降りた。早く着替えを済ませないと小林さんはバスルームから出て来れない。私の服は昨日の夜にシャワーを浴びた後に畳んでソファのところに置いてある。

 
 あまり待たせないように着替えを済ませると、私は小林さんに声を掛けたのだった。小林さんが着替え終わったら、私もバスルームで髪を結びなおそうと思った。


「着替え終わりました」


 私の声が聞こえたのか小林さんはバスルームから出てきて、私の前に立つとフッと笑うといきなり私の身体を抱き寄せた。まさか、抱き寄せられると思ってなかったので私は驚きのあまり身体を固くする。


「可愛いよ。美羽ちゃん」


 耳元で囁かれた言葉で私はハッとした。さっきは寝起きだったし、小林さんも半分寝とぼけていたような状況だったけど、今は顔まで洗ってすっきりとしていた。さっきの寝癖まで綺麗にしている。それに比べ私はまだ化粧してない。この年になると化粧は身嗜みだと思う。

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