あなたと恋の始め方①
「これ?あの。私に?」


 箱の中にある指輪はコロンとしたアクアマリンの石が付いていて、その周りを小さなダイヤモンドと繊細な細工を施したプラチナの銀色が優しい光と放っている。見つめるだけの私の手からその箱を取ると、小林さんは箱の中から指輪を取り出し、私の右手の指にそっとはめる。


 サイズを計ったようにピッタリの指輪は私の右手の薬指に太陽の光を浴びていてキラキラ眩しい。私は自分の手を太陽に翳し、輝く指輪に視線が囚われた。


「これ。あの。私に?」


「うん。美羽ちゃんにと思って俺が買った。実は前にここで渡したかったんだ」

「え」


 前にここで?折戸さんを見送った時?


 でも、あの時は告白らしきものはされたけど、まだ付き合うとかそんな感じでもなかったのに。そんな時期に小林さんが私のために指輪を用意しているとは思わなかった。


「街を歩いていたら、美羽ちゃんに似合いそうと思って、つい衝動買い。で、ここで渡そうと思ったけど…。好きだというだけで精一杯で渡せなかった。でも、今考えるとあの時に渡しても貰ってくれなかったと思う。いきなり指輪とか渡されたら重いよ。でも、あの頃の俺も結構いっぱいいっぱいだったから、後から自分の気持ちをもっと美羽ちゃんに分かるように伝えるべきだったと反省した。


 美羽ちゃんのこと。一人の女の子として好きだってきちんと言うべきだったんだ」

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