あなたと恋の始め方①
「大丈夫です。私は部屋に人を入れたりしませんから。男の人で私に部屋に入ったのは父親と今から入る折戸さんだけです。だから大丈夫です」


「蒼空は?」


「今日初めて来ます。ハンバーグを食べたいというから作ってあげたんです」



 折戸さんは少し考えている風だったけど、綺麗な微笑みを浮かべ私を見つめる。そして、少し甘めの声を飾り気のない私のマンションの玄関に響かせたのだった。


「蒼空も来るなら、お邪魔しようかな。蒼空にも会いたいと思っていたからちょうどいい。美羽ちゃんの言葉に甘えてお邪魔します」


 そう言って、折戸さんは私の部屋に上がってきた。折戸さんはただ歩いているだけなのに、優雅さや華やかさを振りまいている。本社営業一課に居た時もそうだと思ったけど本当に綺麗な人だと思う。綺麗なだけでなく一緒にいるとダメになりそうなほど甘く優しい。


 リビングに入るとゆっくりと部屋の中を見回す。それが何だか楽しそうだった。昨日のパソコンの中にあった女の子部屋の画像に比べるととっても殺風景な部屋だからそんなに見ないで欲しい。



「そんなに見ないでください。恥ずかしいです」


「ごめんね。美羽ちゃんらしい部屋だって思って見てた。綺麗に片付いているし、本がいっぱい。俺はこの部屋好きだよ」


 そう言って折戸さんは私に綺麗すぎる微笑みをくれる。そんな折戸さんの微笑みに自分の顔が赤く染まるのを感じた。今日は小林さんが来るからいつも以上に綺麗に片付けたけど、根本的に私のいつも生活している空間には変わりない。だから、『好き』という言葉に反応してしまった。

 
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