あなたと恋の始め方①
「すみません。朝からギリギリで、すぐに仕事の入ります」


「別にまだ始業時間になったばかりだから気にしなくていい。ただ、坂上は早めに来るから珍しいと思っただけだ」


「すみません」


 いつもの電車に乗れたけど、研究所最寄りの駅から研究所までの少しの徒歩が筋肉痛の身体には辛かった。でも、研究所に着いたからには後は仕事に掛かるけど、基本的にデスクワークなのでどうにかなるだろう。


「謝る必要ない。今日もパソコンの打ち込みからお願いする。先週からの研究の結果がどんな風に数値に出るのか楽しみだ。いい風に出れば、あの高見主任も何も言わないだろう」


 中垣先輩の言葉は朝に飲んだ苦いコーヒーよりも私をピリッとさせてくれた。思い出させるのは高見就任の言葉であって、中垣先輩は高見主任の言葉を意識しているのだろう。それにしても、高見主任の人を仕事に駆り立てる指導力には頭が下がる。


「はい。頑張ります」


 私は素直に中垣先輩の手から資料を取ると、自分の席に着き、パソコンに向かう。打ち込んでいきながら…。私は研究の成果に目を見張ることとなった。先週からの中垣先輩の頑張りは凄く、このままだったら無理ではないかと思われた春には製品として世に送り出すことが出来そうだった。


 中垣先輩の本気は結果になって現れるから凄いと思う。私も見習いたいと思うけど、まだまだ私には足りないものがいっぱいある。追いつきたいけど、追いつけない。


 そして、今日もバタバタしているうちに一日が終わってしまった。

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