あなたと恋の始め方①
 映画は本当に面白かった。さっきまで思いっきり泣いたのは嘘だったかのように私は笑っている。借りてきた一枚を見終わると、小林さんはスッと立ち上がり、キッチンに行くと冷蔵庫から今度はお茶ではなく、ビールを持ってきた。


「美羽ちゃんも飲まない?帰りはタクシーで送るから大丈夫」


「お茶でいいです。それに帰りも自分で帰るから大丈夫ですよ」


「うーん。じゃ、飲むの止める」


「えっと。送って貰います」


 態々送って貰うのは申し訳ないと思ったけど、小林さんが土曜の夕方にビールを飲みたい気持ちも分かる。だから、自由にして欲しいと思った。小林さんはホッとした顔をすると、プルタブからプシュッといい音をさせたのだった。そして、美味しそうに飲むのを見ながらこれでよかったのだと思った。そして、二枚目のDVDをデッキに入れた。


 恋愛の映画だった。


 でも、今日の映画館で見たような擦れ違いで切ない映画ではなく。どちらかというとコメディタッチの映画で見ながら笑ってしまう。でも、そのヒロインの可愛い仕草に目を奪われていると、スッと私の前を影をなす。そして、小林さんの唇がそっと私の唇に触れた。


 吃驚して開いた目がテレビの中でヒロインも素敵な彼にキスをされていた。


 小林さんのキスは触れるだけの軽いものだったけど、ドキドキしすぎて顔が真っ赤になるのを感じる。離れていく小林さんの顔には少しだけ色を染めていて、男の顔をしていた。


「美羽ちゃん。好きだよ」


 そんな言葉と共に私の身体はキュッと小林さんに抱き寄せられたのだった。

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