あなたと恋の始め方①
「映画どうなってる?」


 そんな小林さんの言葉に抱きしめられたまま、テレビの画面に視線を映すと、今の私と同じように映画の中のヒロインも抱き寄せられていた。ただ、映画の中だから、部屋の中ではなく、街の真ん中という大胆さではあるけど、抱き合っているのは一緒だった。


「ヒロインが抱き寄せられてます」


「そう。じゃ、ヒロインが彼から離れたら教えて。俺もそれまで美羽ちゃんを抱き寄せていたい」


 画面の中では映画は徐々に進んでいく。勿論映画の中のヒロインは既に彼の腕から離れているのに私はそれを言わなかった。それはもう少しだけ小林さんの腕の中に居たかったから。ドンドン映画は進んでいくけど、私も言わなければ、小林さんも腕の力を緩める気配はない。


 小林さんの温もりを感じながら、それと同時に小林さんが私のことを大事に思ってくれているのも伝わってくる。映画館で会った、のどかさんに私は嫉妬した。これ以上ないくらいにヤキモチも焼いた。でも、そんな胸の痛みも今は癒されていく気がする。


「もっと俺に甘えて。美羽ちゃんは我慢しすぎる」


「小林さんに甘えてますし、我慢もしてないですよ」


「それならそれでいい。でも、俺はズルいから美羽ちゃんが俺から離れられないくらいに甘やかすから覚悟しておいて」


「これ以上ですか?」


「そう、これ以上。まずは終わったDVDを止めないと」


 映画は一番いいシーンを終わらせてしまい、エンドロールが流れている。


「その前にもう一回キスしたいです」


 私の言葉に小林さんはニッコリと笑うと私の唇に自分の唇を重ねたのだった。
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