あなたと恋の始め方①
 そんな話をしていると奥の研究室から中垣先輩が出てきた。


 中垣先輩は髪を無造作に掻きながら奥の研究室から出てきて、ドアの所に高見主任と折戸さんしかいないのを見て、満足そうに口の端を上げた。取締役は年配の方だから、専門用語には弱い。噛み砕いて説明しないといけないけど、高見主任と折戸さんだったら…。


『説明が楽で、早く研究に戻れる』


 これが中垣先輩の思っていることだろう。長年一緒にいるからか、何を言わなくても大体のことは分かるようになっていた。


「お呼びくださればこちらから行きましたが、説明はここでいいですか?」


「勿論です。研究の内容も知りたいですが、本社で一緒に働いた坂上さんがどんなところで今仕事をしているのかを知りたかったので、こちらで十分です」


 高見主任はサラッとそんなことをいうから、私は絶句してしまう。私の研究室を見たいなんて物好き。それと同時に少しの間だったけど、部下として大事に思ってくれていたのが分かった。大事にされているのは分かっていたけど、それを言葉にして貰うとやっぱり嬉しい。中垣先輩は小さな苦笑を漏らすと高見主任たちの方に向き直ったのだった。



「そうですか。ではこちらで研究の説明させていただきます。坂上。資料を配って。

 さて、今回は前回の素材の改良版ということで、そこにいる坂上と一緒に先日、形になったものです。まだ、完璧とは言えませんが、従来品よりは20パーセントは向上していると思います。まだ従来品との対比による対価は分かっていませんが、その面でもかなり期待の添えるのではないかと思います」

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