あなたと恋の始め方①
 私は高見主任と折戸さんを研究室の端にあるソファに案内すると、用意していた資料を渡した。かなり吟味して作ったから資料はかなりの分量がある。かなり重たいにも関わらず、高見主任も折戸さんも嫌な顔一つしないでパラパラと捲りながらも視線は鋭く、資料を凝視している。


 中垣先輩の説明を聞きながら真剣な表情を零しているのは高見主任だけでなく、折戸さんも一緒だった。新製品の開発は国内のみならず海外拠点でも興味をそそられるところだろう。でも、表情の真剣さで言うと高見主任だった。


 頭の中がスーパーコンピューター並みに作動していそうで、資料を作った私としては緊張の時間だった。横に座っている中垣先輩は自信があるのか、緊張しているのは私だけだった。最後まで説明が終わると、フッと息が漏れた。そして、高見主任と折戸さんの反応が気になった。


 頑張ったから少しでも希望に沿えていると思いたい。研究というのはすぐに結果を出せるものではない。今回の製品の開発もかなりの時間を要している。何度、終電で帰宅することになった。正直、人間らしい生活も出来ないくらいに研究に必死で、そして、やっと先日、報告出来るだけの数字を残すことが出来た。ここまでの道のりは楽ではなかった。


 だからこそ、高見主任に認めて貰いたかった。この製品がどれだけ優れ、どれだけの効果を生むのかを知って欲しかった。


「素晴らしいですね。それで、製品化の目処は?」

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