あなたと恋の始め方①
 高見主任と折戸さんの様子を見ていると私と中垣先輩がどれだけ頑張ったのか分かってくれたみたいだった。二人の満足そうな顔を見ているだけで、今までの頑張りが報われた気がした。本社営業一課から研究所に戻ったことを失敗と思われたくなかった。


 製品の目処。


 今、従来品からの改良としていい製品は作れたと思う。でも、これを製品化となると生産ラインに乗せるのに時間が掛かる。大掛かりな生産に耐えうるだけの製品に作り上げるのにはまだ時間が掛かる。私の予想なら、来年の秋だった。でも、中垣先輩の口から出た言葉に絶句する。


「来年の夏までにはと思っていますが?」


 中垣先輩の言葉にこれからの残業の日々が目に浮かぶ。作るだけでなく、この製品をラインに乗せるためにいくつもの関門が待ち構えているのを中垣先輩は忘れたのだろうか?私は目で訴えたつもりだけど、中垣先輩は私の方を見ない。


「夏ですか?春までにはどうにかして欲しいのですが」


 春?春って来年の春?高見主任の言葉にはもっと絶句してしまう。私の予想よりも半年も早い。どうしたらいいのだろう?無謀すぎる。


「無理です。研究はそんなに簡単なものじゃないのは高見主任が一番ご存知でしょう」


 高見主任の言葉に負けず、中垣主任も言葉を発する。強い語気は中垣先輩の本来の強さだと思う。


 でも、それで折れてくれるほど、高見主任は甘くない。高見主任の頭の中には営業のビジョンが組み込まれているのだと思う。それはきっと厳しい道のりに違いない。
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