モバイバル・コード
 そう、雷也の家『霧島家』は医者の家系だ。


 確か父親が内科の医師。


 語る慶兄は、コーヒーを握る手に力が入ってた。その姿を照らす月がスポットライトのようだ。


「龍、自由を勝ち取るには努力するしかない。俺は遊びたかった。だから両親を納得させる学力を手に入れた。3人とも、俺とは9歳差だろ?

小さい頃はたくさんお勉強したさ。英才教育っていう名前の監禁。まだ3人が生まれる前だ」


 慶兄はコーヒーをゴクりと音を立てて飲み、続けた。


「まぁそういうタネがあったってこと。雷也の奴は気づいてないフリをしてる。

それは自分の弱さを認めたくないからだ。兄貴は天才って言い続けていれば負けても『理由』がつく。

自分はこれだけ頑張っても秀才止まりだって言い訳がつく。龍一、お前気づいていただろ。そういう雷也の……キモチに」


 知ってるさ。


「……慶兄、言わないのも思いやりだろ? 間違っているから、一から十まで相手に説明しないとならないのかよ?」


 突然、慶兄が立ち上がる。オレを真っ直ぐ見下ろす。刺すような視線だが、オレも目線は外したくない。


「龍一……」


 なんだ、何かまずいことでも言ったの……か?
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