モバイバル・コード
「楽しくない、つまらない事に興味はない。この話はな、高校生だけに当てはまるものじゃない。

世の中の大人の『6割』がただ毎日流されてるだけだ。後の『3割』が周りに興味がない人間。後の『1割』がホンモノだ」


「ホンモノって…何?」


『ホンモノ』という言葉が重くのしかかる。


 真夜中の真剣な話に、自分が少し大人に近づいた気がした。


「真に自分を救える人間。周りに強い影響力を及ぼす人間。結果として、人生をタフに生き抜ける人間」


 段々とこの場が慶兄の話に支配される。


 まるでインタビューの時のように観客が居て、その人達に言い聞かせてるようだった。


「リュウ、お前にだけ本当の事を伝えたい。俺は努力なんてしてないように見せてるだけだ。一切周りに見せないだけ。

お前や雷也と遊んでた時だって、同学年の友達と遊んでいた時だって勉強してる素振りは見せたくなかった」


「慶兄……」


 オレは、なぜか息を殺した。


「周りに流されるフリをしてた。もっとも、俺が気づいた理由は龍と違って生活苦ではなかった。

医者の家系に生まれたんだ、長男が継ぐのが当たり前だと親父は思ってた。そして世間一般の考えも同じだ。医者の家は医者になれ。それが嫌でたまらなかった」
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