モバイバル・コード
「もう朝……か……」



 平日の朝は週に3回、早朝から弁当屋のアルバイトだ。


 朝10時半に起きて、10分で仕度をして、朝飯も食わずに自転車で向かう。


 自転車に乗る前に、携帯を見ると慶兄からメールが入っていた。


 オレもこの数日で携帯電話を見ることが習慣づいたようだ。


──From:霧島慶二──

『久しぶりに会えて嬉しかったぞ龍。新サイトで頑張って賞金ゲットしろ。お前なら出来る。』
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 慶兄の激励メールを受け、バッチリ目が覚めた。


 この時期は、日に日に空気が寒くなる。


 9月から10月、11月にかけての1週間単位で、どれほど気温が変わるのだろう。


 一週経つ事に2℃ずつ下がっているような感覚。


 寒くなるに連れて行動が鈍くなるのが動物の習性だが、オレはこの時期のこの季節が一番好きだった。


 頭にかかっている眠気や煩悩(ぼんのう)という『かすみ』を秋風が吹き飛ばしてくれる。
 

 寒くなれば寒くなるほど、龍一という人間は生き生きとするらしい。


 早朝、すれ違う人は誰も居ない。たまに車が通るくらい。


 そんな地元の住宅街を自転車で走っていると、オレだけが眠っている世界を出し抜けた気がするんだ。
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