桜色の恋 (龍と桜とロボットと。)



「きょーはね、ようちえんでね、
おえかきしたの!」


「へぇ…なんの絵描いたんだ?」


黒に光るランドセルを下ろして
いくつかの2と書かれた教科書と筆箱を机に置くと、
私を抱き上げるお兄ちゃん。


「おはなとー、ねこさんとー、
おうちとー、」

指折り数えながらそう言っていると、
くすくす笑いながらソファに座るお兄ちゃん。

抱き上げられたままだった私は
そのままお兄ちゃんの膝に座った



「あとね、おにーちゃん!」


「俺も?」

「うん!」


そう言ってブンと首を振って肯定すると
嬉しそうに笑ったお兄ちゃん。



その嬉しそうな顔が嬉しくてニコニコと笑った時。




「あら、お兄ちゃん帰ってたの」

二階から降りてきたお母さんが
キッチンに入った。



「うん、ただいま母さん」


「宿題は?
やったの?」

「あ…ううん、今から。
今日和と今日の話をしてたから……」


ドンッ



キッチンで聞こえた音に
ビクリと肩を揺らす。



「なんで?
日和!!どうしてお兄ちゃんの邪魔するの!?」


キッチンから出てきたお母さんが
足音を立てながら歩いてきて
目の前に仁王立ちする。


「いつもいつも…」


「ごめんなさいおかーさん!」


ぴょんと膝から降りて
お母さんの目の前に立った


「ひよりがね、
おにーちゃんにおはなしきいてほしくてね、
おねがいしたの…
ごめんなさいお母さんっ……!」


ごめんなさい、

ぺこりと頭を下げた。



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