溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~

どんな話をしたのかな。

ジェイドさんが日本の会社との話に乗り気じゃないのは、甲斐と私の話題が出て、考え方の食い違いがあったとか、そんな嫌な話はないよね?

私の話は出ていなかったと信じたい。

聞きたくないけど、二人の間で私の名前が出てくのかもしれないと思ったら、複雑な気分になる。

早く眠って忘れてしまおうと寝室へ向かう。
が、部屋に戻るとスクリーンもそのまま、バルコニーへのドアも開いたまま、ジェイドさんの姿がどこにもなかった。

窓辺のカーテンが、冷たい夜風になびいている。

潮の香りが微かに部屋に染みついていて、私も再び部屋を飛び出した。

私が居ないから探しに行った?
私がこっそり出て行ったから。

ぐっすり眠っていて起きないと思って伝言も書かなかった私が悪いんだけど、心配をかけてしまったら申し訳ない。

そう思いつつ、廊下を走る。

エレベータを待つ僅かな時間さえ、気が急いて足が行ったり来たり。

漸く乗って、闇雲に探し歩くとまるで運命かのように、吸いつけられるように彼を見つけた。
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