溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
「私は会いたくないよ」
「彼も同じ気持ちなら、此処まで乗り込んできたりはしないだろうな」
平然と彼が言う。
私の気持ちなんて、分かってくれていないような、――伝わっていなかったような。
甲斐なんて、とっくの昔に終わった恋だ。
私にしたら、100年過ぎてしまったもの。
なのに、ジェイドさんにはまだ5日前の事なんだ。
「まだ、会うかも分からないから気にするな。俺との仕事だけで来たのかもしれない」
「そうだと思いますよ」
何だか、白けてしまって、私も床に視線を落としながら拗ねた可愛くない受け答えをしてしまう。
彼の足を見ても、答えなんて出て来ないのに。
「だが、俺は」
サラサラと髪を掻きあげて彼は困ったように笑う。
ヘリの音がかき消してくれたらいいのに、ジェイドさんの声ははっきり聞こえた。
「一度もナホの名を出さなかったら、彼に失望してしまうだろう。女性に誠実ではないのだから」
彼も譲れない部分があるのだ。
それは、人を見る上で外せない、彼の気持ちだ。
「取り合えず、ゲストを迎えに行かなくては」