溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
最上階のロイヤルスイートルーム。
今さらあっちこそ合わす顔が無いはずだと、強気な気持ちでエレベータに乗り込んだ。
けれど、足が震えてしまっていたのはちょっと情けなかったかな。
「大丈夫ですか? ケイリーさんだけでも連絡しておいたほうが良かったですかね?」
「いえ。大丈夫です」
ジェイドさんが甲斐の元へ向かってからもう3時間は経っている。
まさか甲斐でも3時間ずっとアピールしているわけじゃないはずだし。
そう思い、エレベータが最上階へ着き、ゆっくりと足を一歩踏み出す。
「私がブザーを押しましょう」
もはや親切心なのか好奇心なのか、ブラウさんが嬉々としてインターフォンを押す。
一応大事な商談の最中かもしれないのに。
『はい』
短く低い声がしたけれど、誰の声かも分からなかった。
「すいません。甲斐様に御客様をご案内してきました」
『客?』
高圧的な声で、思わず眉を潜めてしまった。
ジェイドさんでも甲斐でもない。
『専務、失礼します。俺の客ですので』
中から聞こえてきた声は、あの夜の様にスコープから私を見たのだろう。
勢いよく扉を開けた。