溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
「お前から先に言って」
せっかくセットした似合わない髪形をくしゃくしゃに掻きながら、視線を海へ向けるとそう促す。
だから、私も綺麗な水平線に視線を移しながらはっきり言う。
「二度と甲斐なんかと会いたくないって思ってた」
「今のはキた。――毎晩、夜思い出して、叫びそう」
「叫べば? 私はアンタを非難する権利はあるよね」
「ごめん」
「……」
今さら謝ってもらっても、全くスッキリしない。
胸にこびり付いた不快感は、私たちの八年間を色褪せさせていく。
「私がアンタを許さないと、きっとジェイドさんは甲斐の会社と提携しないと思うから、――私は甲斐と和解したくて此処に来たの」
「どういうことだ?」
「甲斐は、本当にジェイドさんの会社と提携したいの? 本気なの?」
甲斐の質問には答えずに、自分の話ばかり振ってみた。
今はただ、確かめたいの。
「本当だよ。お金の問題じゃないが、莫大な費用をかけてヘリで彼を追いかけてくるぐらいには、本気だ。彼の本社は悪い反応じゃないのに、ジェイド船長だけ渋っている。日本に滞在中は大切な時間だから接待も仕事も断られたし。チャンスは今しかなくて」